簿記の学習で最初につまずくのが「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」です。名前の意味を考えれば考えるほど混乱するこの2語を、語呂合わせと5要素の表、そして住宅ローンの返済のように借方と貸方の両方に複数科目が並ぶ「混ざった取引」まで、具体的な家計の仕訳で身につけます。

「借方・貸方」でつまずく理由

簿記の学習でほとんどの人が最初にぶつかる壁が「借方」「貸方」です。名前だけを見ると「借りたお金」「貸したお金」のように意味を想像してしまいますが、実際には単なる「左側」「右側」を指すラベルにすぎません。もともとは中世イタリアの銀行業で、帳簿の左側に「銀行が誰かにお金を貸した記録」、右側に「銀行が誰かからお金を借りた記録」をつけていた名残だといわれていますが、現代の簿記で使うときにその語源を意識する必要はまったくありません。意味を深読みしようとすればするほど混乱するので、まずは意味を考えるのをやめて、位置の暗記に切り替えるのが近道です。

覚え方1:位置は語呂合わせで固定する

もっとも定番の覚え方は、「借(か)りかたは左、貸(か)しかたは右」とセットで唱えることです。「かりかた」の「り」が左払いのひらがなの形、「かしかた」の「し」が右払いの形に似ている、という語呂で紹介されることが多く、一度声に出して覚えてしまえば以後迷うことはありません。

仕訳を書くときに毎回「借方=左、貸方=右」という前提を疑わなくて済むようになると、次のステップである「何を借方に書き、何を貸方に書くか」の判断に集中できるようになります。逆に言えば、位置そのものを毎回考え直しているうちは、仕訳の勉強がなかなか先に進みません。最初の数日は意味を気にせず、左右の呼び方だけを機械的に覚えてしまうのが結果的に近道です。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

借方・貸方は意味を考えるほど迷子になるよ。「借りかたは左、貸しかたは右」とだけ丸暗記してしまえば、あとは何が増えて何が減ったかの判断に集中できるんだ。

覚え方2:5要素のどちら側で増えるかを表で覚える

位置が固定できたら、次に覚えるのは「資産・負債・純資産・収益・費用」という5つの要素が、それぞれ借方と貸方のどちら側で増えるかというルールです。これも丸暗記ではなく、次の表を1枚覚えるだけで整理できます。

5要素の増減と借方・貸方の対応表
要素増えるとき減るとき
資産(現金・預金など)借方(左)貸方(右)
費用(家賃・食費など)借方(左)貸方(右)
負債(未払金・ローンなど)貸方(右)借方(左)
純資産(貯蓄・元入金など)貸方(右)借方(左)
収益(給料・利息収入など)貸方(右)借方(左)

「資産と費用は左側の仲間、負債・純資産・収益は右側の仲間」というグループ分けだけ覚えておけば、あとは取引ごとに「何が増えて何が減ったか」を当てはめるだけで仕訳が組み立てられます。

なぜこの並びになるのか、理由も添えて覚えると忘れにくい

丸暗記だけでは時間が経つと崩れやすいので、理由もセットにしておきましょう。資産は「持っているとうれしいもの」なので、増えるときに目立つ左側(借方)に置くと覚えられます。逆に負債は「返さなければいけないもの」なので、資産とは反対の右側(貸方)で増えます。純資産は「資産から負債を引いた本当の財産」なので、負債と同じ右側の仲間です。そして収益は純資産を増やすもの、費用は純資産を減らすものなので、それぞれ純資産と同じ側・反対側に並びます。この理屈が1つ分かれば、表を丸暗記していなくても、その場で残り4つを導き出せます。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

5つ全部を丸暗記しなくても大丈夫。「資産は増えたらうれしいから左」と1つだけ覚えれば、負債と純資産はその反対の右、収益は純資産を増やすから右、費用は純資産を減らすから左、と芋づる式に導き出せるよ。

家庭の取引で仕訳を練習してみる

覚え方を使って、実際の家庭の取引を仕訳にしてみましょう。

給料25万円が普通預金口座に振り込まれた時点の仕訳
借方金額貸方金額
普通預金250,000円給与収入250,000円

「普通預金という資産が増えた」ので借方(左)、「給与収入という収益が発生した」ので貸方(右)に書きます。資産と収益がそれぞれ表通りの側に来ていることを確認してみてください。

電気代8,000円が普通預金口座から引き落とされた時点の仕訳
借方金額貸方金額
水道光熱費8,000円普通預金8,000円

「水道光熱費という費用が発生した」ので借方(左)、「普通預金という資産が減った」ので貸方(右)です。費用は資産と同じ「左側の仲間」なので、発生したときは必ず借方に書きます。

つまずきポイント:1つの取引に2つ以上の要素が混ざる場合

ここまでの例は、借方と貸方にそれぞれ1つの科目しか登場しませんでした。しかし実際の家計の取引では、1つの取引の中に複数の要素が混ざることがよくあります。ここが多くの人がつまずく最大のポイントです。住宅ローン10万円(元本9万円・利息1万円)を口座から返済した例で見てみましょう。

住宅ローン10万円(元本9万円・利息1万円)を返済した時点の仕訳
借方金額貸方金額
住宅ローン90,000円普通預金100,000円
支払利息10,000円

この取引を1つのまとまりとして「ローンを返した」とだけ捉えると、借方に何を書けばいいか迷います。コツは、取引を要素ごとに分解することです。この返済には「負債(住宅ローン)が9万円減る部分」と「費用(支払利息)が1万円発生する部分」の2つが混ざっています。表を思い出すと、負債の減少は借方、費用の発生も借方です。だからどちらも左側にまとめて書き、貸方には減った資産(普通預金)10万円だけを書きます。借方の合計90,000円と10,000円を足した100,000円が、貸方の100,000円とぴったり一致する点も確認してください。

クレジットカードの引き落としも同じ考え方です。カードの利用時に発生した未払金(負債)が引き落としで減る部分と、年会費のような費用が同時に発生する部分が混ざっていれば、やはり要素ごとに分けて借方・貸方に振り分けます。1つの取引でも、要素ごとに分解して考えれば、表のルールがそのまま使えることが分かります。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

1つの取引を丸ごと考えようとすると迷子になるよ。住宅ローンの返済なら「負債が減る部分」と「費用が発生する部分」に分解して、それぞれ表に当てはめる。分解して考えるクセをつければ、複雑な取引も怖くないよ。

ここまでの内容を、実際にBokiBookで仕訳してみましょう。

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BokiBookで実際にやってみる

BokiBookでは、取引を入力するときに借方・貸方それぞれの科目をリストから選ぶだけで、上記のような仕訳をそのまま記録できます。科目には「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の分類があらかじめ設定されているため、覚えたばかりの5要素のルールを画面上で確認しながら入力を進められます。

BokiBookの貸借対照表。資産の部に各科目の残高が並んでいる
借方に記録したものが積み上がった結果が、この貸借対照表の資産の部です。借方と貸方を正しく振り分けていれば、資産の合計は必ず負債と純資産の合計に一致します。
BokiBookの仕訳入力画面。借方と貸方に勘定科目と金額を入力する
仕訳入力画面です。住宅ローンの返済のように借方が住宅ローンと支払利息の2行に分かれる仕訳も、借方の見出し横にある+ボタンで入力欄を増やせば対応できます。貸方の金額と合計が一致するまで登録できないため、要素の分解を間違えるとその場で気づけます。

給料の受け取りを登録すれば、貸借対照表の預金残高と損益計算書の収益がその場で連動して増え、電気代のような費用を記録すれば、その月の家計の収支にすぐ反映されます。住宅ローンの返済のように借方が2行に分かれる仕訳も、明細行を追加するだけで対応できるので、紙やExcelで計算する手間はかかりません。まずは今月の給料や固定費など、身近な取引から借方・貸方を意識した記帳を試してみることをおすすめします。

どんぐり
どんぐりのまとめ

迷ったら「借りかたは左、貸しかたは右」に戻って、取引を要素ごとに分解する。この2つさえできれば、住宅ローンの返済のような複雑な仕訳でも自力で組み立てられるようになるよ。