仕訳を入力し間違えたとき、ふつうは編集するか消して入れ直せば済みます。ところが決算整理を実行して期間を締めてしまった後は、その中の仕訳を直接編集も削除もできなくなります。消さずに直す訂正仕訳という考え方と、間違いのタイプ別の具体的な直し方を解説します。

決算整理より前なら、仕訳はそのまま編集・削除してよい

食費を入れるつもりが日用品費で登録してしまった、金額の桁を一つ多く入れてしまった。こうした入力ミスは誰にでも起こります。その月がまだ決算整理を終えていない段階であれば、何も難しいことは考えずに済みます。仕訳入力画面の履歴から該当の仕訳を開いて編集し直すか、いったん削除して正しい内容で登録し直せば、帳簿はそのまま正しい状態になります。元の仕訳が帳簿に残っていた時間は一瞬で、最終的に残るのは正しい1件だけです。

多くの家庭は、気づいたその日かその週のうちに入力ミスを直しています。この場合は訂正仕訳という考え方を持ち出す必要はありません。問題が生じるのは、ミスに気づくタイミングが決算整理より後になったときです。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

締める前の帳簿は書き直し自由だよ。編集するか、消してもう一度入れる、どちらでも結果は同じ。難しくなるのは、決算整理という区切りをまたいでしまってからなんだ。

決算整理で期間をロックすると、同じ期間の仕訳は直接直せなくなる

決算整理を実行すると、その期間に発生したすべての収益と費用の科目残高が損益という科目に集められ、差額である当期純利益が繰越利益剰余金という純資産の科目に振り替えられます。この計算は、締めた時点での各科目の残高を前提に行われています。もし決算整理を終えた後に、締めた期間の中にある元の仕訳を自由に書き換えられてしまうと、すでに計算済みの当期純利益と、実際の収益・費用の内容がずれてしまいます。

このため決算整理で期間をロックすると、ロックした日付より前の仕訳は編集も削除もできなくなります。消したり書き換えたりするのではなく、気づいた時点の日付で新しい仕訳を1件追加し、その新しい仕訳によって帳簿の残高を正しい状態に合わせます。これが訂正仕訳です。間違いの記録を消してしまうのではなく、直した経緯そのものを帳簿に残すという発想だと考えると分かりやすいでしょう。会社の経理で決算を締めた後の帳簿を担当者が自由に書き換えられないのと同じ理由です。

BokiBookの各種設定画面の上部。会計期間設定と、自動決算整理仕訳の一括生成のボタンが並んでいる
各種設定画面の上部です。自動決算のボタンのさらに下に、決算を締めた期間より前の仕訳を編集できなくするロック機能があります。ロックされた期間内の仕訳を編集や削除しようとすると、決算ロック期間内のため操作できないという通知が表示されます。
どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

ロックは不便な制限じゃなくて、計算済みの当期純利益を守るための仕組みだよ。直すときは昔の仕訳を書き換えず、今日の日付で新しい仕訳を足すこと。これが訂正仕訳の基本の形なんだ。

間違いのタイプによって、訂正仕訳の作り方が変わる

訂正仕訳は、何を間違えたかによって組み方が違います。ここでは9月分を決算整理で締めた後、10月になって気づいたという設定で、3つのパターンを具体的な金額で見ていきます。

例1 金額だけを間違えた場合は、差額だけを直す

9月の水道光熱費を、本来は12,000円のところを21,000円で入力してしまいました。元の仕訳は次の通りで、9月はすでにロックされているため、この内容は直接書き換えられません。

9月に入力した、金額を誤入力した元の仕訳
借方金額貸方金額
水道光熱費21,000円普通預金21,000円

実際に口座から引き落とされたのは12,000円なので、普通預金の残高は本来より9,000円少なく記録されたままになっています。10月の日付で、この9,000円の差額だけを戻す仕訳を1件追加します。

10月に追加する、金額差分を修正する訂正仕訳
借方金額貸方金額
普通預金9,000円水道光熱費9,000円

これで普通預金の残高は正しい額に戻り、水道光熱費も年間を通した合計では12,000円に落ち着きます。ただし注意点があります。9月の損益計算書には21,000円という誤った金額がそのまま残り、ロックされているため直せません。10月の損益計算書には水道光熱費がマイナス9,000円という見慣れない数字が一度だけ現れます。月ごとの損益計算書を人に見せる場面があるなら、この10月の数字だけを見て水道光熱費が急に減ったと誤解されないよう、9月の訂正であるという一言を添えておくとよいでしょう。

例2 勘定科目を間違えた場合は、振替仕訳で付け替える

9月にスマホの故障保証サービスの利用料4,500円を、保険料として入力してしまいました。本来は通信費として記録すべき支出です。金額自体は正しく、普通預金から4,500円が出ていったという事実も合っているので、普通預金の側は直す必要がありません。直すべきは、保険料と通信費という科目の割り振りだけです。

10月に追加する、勘定科目を付け替える訂正仕訳
借方金額貸方金額
通信費4,500円保険料4,500円

保険料を4,500円減らし、通信費を4,500円増やす仕訳です。普通預金はどちらの仕訳にも登場しないため、現金の動きには一切影響しません。科目間違いは差額を考える必要がなく、全額をそのまま付け替えるだけで済むという点が、例1の金額違いとの違いです。

例3 仕訳を二重に登録した場合は、逆仕訳で取り消す

9月に食費3,000円の仕訳を登録した後、同じ買い物をうっかりもう一度入力してしまい、同じ内容の仕訳が2件登録された状態で9月が締まってしまいました。元の仕訳はどちらも次の内容です。

9月に二重登録された仕訳のうち、取り消したい1件
借方金額貸方金額
食費3,000円普通預金3,000円

このうち1件分を打ち消すには、元の仕訳の借方と貸方を入れ替えた仕訳を10月の日付で追加します。これを逆仕訳と呼びます。

10月に追加する、逆仕訳による取り消しの訂正仕訳
借方金額貸方金額
普通預金3,000円食費3,000円

ここで初心者がよく踏む落とし穴があります。打ち消すつもりで、元の仕訳と同じ向きの仕訳をもう一度登録してしまうミスです。食費3,000円・普通預金3,000円という同じ形の仕訳をさらに追加すると、取り消しにはならず、食費が3件分の9,000円に積み上がってしまいます。取り消すときは必ず借方と貸方を入れ替えること、これが逆仕訳の唯一のルールです。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

金額だけ違うなら差額を1本、科目だけ違うなら全額を付け替える1本、丸ごと取り消すなら借方と貸方を入れ替えた逆仕訳を1本。間違えて同じ向きをもう一度入れると、消したつもりが倍どころか増やす結果になるから気をつけよう。

訂正仕訳を使う考え方のメリット

ここまでの内容を、実際にBokiBookで仕訳してみましょう。

App Storeで無料ダウンロード

BokiBookで訂正仕訳を登録する

BokiBookでは、決算整理を実行すると各種設定の画面に決算ロックの状態が表示されます。ロックされた期間内の仕訳を編集や削除しようとすると、決算ロック期間内のため操作できないという通知が表示され、その場で保存や削除が止まります。この通知が出たら、元の仕訳をどうにか書き換えようとするのではなく、気づいた今日の日付で新しい仕訳を登録します。

登録する画面は、通常の仕訳入力画面と同じです。日付を今日の日付に合わせ、例1から例3で見た通りの借方・貸方を入力するだけで、訂正仕訳として機能します。特別な操作や専用のボタンはなく、普段の仕訳入力の延長で直せる点がBokiBookの作りです。

BokiBookの仕訳入力画面。借方と貸方に勘定科目と金額を入力する
仕訳入力画面です。訂正仕訳もこの画面からそのまま登録します。日付を必ず今日の日付にすること、そして元のロックされた仕訳には触れないことがポイントです。借方と貸方の合計が一致するまで登録ボタンは押せないため、差額の計算ミスにもその場で気づけます。

決算整理を実行する前にミスに気づいた場合は、この訂正仕訳を使う必要はありません。仕訳の履歴から該当の仕訳を開いて直接編集するか削除して入れ直せば済みます。訂正仕訳が必要になるのは、決算整理で期間をロックした後に気づいたときだけだと覚えておけば、どちらの方法を使うべきか迷わずに判断できます。

どんぐり
どんぐりのまとめ

締める前は自由に直せて、締めた後は新しい仕訳で直す。この2つの場面を分けて覚えておけば、どのタイミングで仕訳ミスに気づいても慌てなくて済むよ。間違いを消すんじゃなくて、直した跡を残すのが簿記のやり方なんだ。