家計簿アプリの多くは、今月いくら使ったかしか教えてくれません。けれども今どれだけ資産があり、どれだけ借金があるかを教えてくれる書類は別にあります。それが貸借対照表です。仕訳例と実際の画面で、家計の貸借対照表の読み方と作り方を解説します。
収支が黒字でも、家計が良くなっているとは限らない
毎月の収支だけを見て安心していると、家計の実力を見誤ることがあります。たとえば1年間で普通預金の残高が30万円増えたとします。一見すると家計は順調に見えます。ところが同じ1年間で、クレジットカードのリボ払い残高が20万円から45万円へと25万円増えていたとしたらどうでしょうか。この場合、家計の中で本当に増えた財産は30万円ではなく、預金の増加分から負債の増加分を引いた5万円だけです。しかもリボ払いには年15%前後の手数料がかかり続けるため、残高が減らない限り、この5万円はさらに目減りしていきます。
単式簿記の家計簿は現金の出入りだけを記録するため、預金がいくら増えたかは分かっても、その裏でどれだけ借金が増えているかまでは教えてくれません。この2つを同時に映し出す書類が、簿記3級で学ぶ貸借対照表です。
預金が30万円増えても、リボ払いの残高が25万円増えていたら、本当に増えた財産は5万円だけだよ。貯金の増減だけを見ていると、裏で膨らんでいる借金に気づけない。資産と負債を同時に見る癖をつけよう。
貸借対照表の基本構造
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう、B/S)は、ある時点での財政状態、つまり何をどれだけ持っていて、どれだけ借りているかを一覧にした表です。よく「家計の健康診断書」と呼ばれます。損益計算書が1か月や1年間という期間の成績を示すのに対し、貸借対照表はある1日を切り取ったスナップショットである点が異なります。
作り方はシンプルです。左側に資産、右側に負債と純資産を並べ、次の関係が必ず成り立ちます。
資産 = 負債 + 純資産
資産は現金・預金・NISAなどの投資・車や家などの固定資産といった、持っているものです。負債は住宅ローンやクレジットカードの未払金といった、返す義務があるものです。そして資産から負債を差し引いた残りが純資産で、これが家計にとっての本当の財産にあたります。預金がどれだけあるかではなく、この純資産の額こそが、家計の体力を表す数字です。
単式簿記の家計簿では見えない部分
単式簿記の家計簿は今月いくら使ったかは分かっても、今どれだけ資産があり、どれだけ負債があるかは別途集計しないと分かりません。簿記のロジックで日々の取引を記帳していれば、貸借対照表は自動的にでき上がるため、常に家計全体の財政状態を把握できるのが大きな違いです。
貸借対照表の主役は純資産だよ。資産の合計がいくらあるかではなく、そこから負債を引いて何が残るか。これが家計の本当の立ち位置になるんだ。
家庭の資産と負債を貸借対照表の視点で仕訳してみる
貸借対照表に載る資産や負債が、日々の取引でどう動くのかを具体的な金額で見ていきます。
例1 頭金500万円、住宅ローン2,500万円でマイホームを購入した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物・土地 | 3,000万円 | 普通預金 | 500万円 |
| 住宅ローン | 2,500万円 |
「建物・土地」という資産が3,000万円増え、その調達源として「普通預金」という資産が500万円減り、「住宅ローン」という負債が2,500万円増えます。差額の500万円分だけ、純資産が増える形になります。
例2 クレジットカードで10万円の買い物をした(引き落とし前)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 食費など | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 |
「未払金」は負債です。カードで買い物をした瞬間から引き落とし日までの間、この10万円は負債として貸借対照表に残り続けます。単式簿記の家計簿では見落としがちな、まだ払っていないけれど確定している支払いが、貸借対照表を見ればすぐに分かります。
例3 NISA口座で投資信託を30,000円分購入した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
この取引は資産の中身が預金から投資有価証券に入れ替わっただけです。純資産の額自体は変わりませんが、貸借対照表上の資産の内訳が変化します。こうした資産の組み替えを記録できるのも、簿記のロジックで家計をつけるメリットのひとつです。
3つの例に共通しているのは、お金が動いても純資産が減るとは限らないということだよ。住宅ローンを組んでも家という資産が増えているし、投資信託を買っても預金が姿を変えただけ。純資産が減るのは、価値が本当に消えたときだけなんだ。
同じ「負債」でも中身がまったく違う
貸借対照表を読むときにつまずきやすいのが、負債はすべて同じように悪いものだと考えてしまうことです。住宅ローンとクレジットカードのリボ払い残高は、どちらも貸借対照表の負債の部に並びますが、中身は正反対です。
住宅ローンの残高が2,400万円だったとしても、その裏には査定額2,800万円の建物・土地という資産があります。負債を上回る資産の裏付けがあるため、万が一家を売却すれば負債を完済してもなお400万円が手元に残ります。つまりこの負債は、資産に姿を変えて残っている借金です。
一方、リボ払いの残高45万円には、対応する資産がありません。すでに消費して消えてしまった買い物代金の後払いにすぎず、資産の裏付けを持たないまま、手数料だけが積み上がっていきます。貸借対照表の負債の部を見るときは、金額の大小だけでなく、その負債が資産の裏付けを持つ「良い借金」なのか、価値が消えたあとに残った「悪い借金」なのかを区別する必要があります。
この区別は、住宅ローンの中でも当てはまります。頭金を多く入れて借入額を資産価値の範囲内に収めていれば、いつでも売却して負債を完済できる状態です。逆に頭金無しで借入額が資産価値に近い、あるいは上回っている場合は、不動産価格が下落した瞬間に、資産を売っても負債が残る状態に転じます。同じ「住宅ローン」という科目でも、借入額と資産価値の差額しだいで安全度がまったく違うということです。
負債の金額だけを見て一喜一憂しないでほしいんだ。住宅ローンは家という資産と対になっているけど、リボ払いの残高には対になる資産が無い。同じ負債でも、資産の裏付けがあるかどうかで質がまったく違うんだよ。
BokiBookで貸借対照表を見てみる
BokiBookでは、住宅ローンやクレジットカードの未払金といった負債科目、預金やNISA口座などの資産科目をあらかじめ登録しておけば、日々の取引を入力するだけで貸借対照表画面が自動的に更新されます。集計作業は一切不要で、いつでも今の資産・負債・純資産を確認できます。
純資産がどう動いてきたかは、ホーム画面のグラフでも確認できます。
まずは今お持ちの預金口座やローンを資産・負債として登録してみてほしいんだ。登録した瞬間に貸借対照表ができて、純資産がいくらか一目で分かるようになる。貯金の額だけを見ていたときには気づかなかった家計の立ち位置が見えてくるはずだよ。