前受収益と未収収益は、簿記3級の決算整理で必ず出題される収益側の経過勘定です。以前の記事で解説した前払費用・未払費用が費用側の経過勘定だとすれば、この2つはその収益版にあたります。家計簿ではめったに登場しませんが、駐車場や部屋を貸している家庭、定期預金を持っている家庭では実際に発生する処理です。具体的な金額と、翌期首に必要な再振替仕訳まで含めて解説します。

前受収益・未収収益とは何か。なぜ家計簿ではほとんど出てこないのか

簿記の経過勘定には4種類あります。費用を先に払う前払費用、費用がまだ払われていない未払費用、収益を先に受け取る前受収益、収益がまだ受け取られていない未収収益です。前払費用と未払費用は年払い保険料の記事と水道光熱費の記事で扱いましたが、どちらも家庭が「払う側」の話でした。前受収益と未収収益は逆に、家庭が「受け取る側」で発生します。

給与収入だけで家計が回っている家庭では、この2つはまず出てきません。給与は働いた分がその都度支払われるため、期をまたいで前受けや未収が発生しにくいからです。前受収益と未収収益が出てくるのは、駐車場や空き部屋を貸して継続的に賃料を受け取っている、定期預金や個人向け国債の利息を受け取っている、副業で年間契約のサブスクリプション収入があるといった、時間の経過に応じて収益が発生し続ける契約を家庭が持っている場合です。

ここが前受金・未収金という別の科目との混同ポイントでもあります。詳しくは後述しますが、まずは「時間の経過とともに少しずつ発生する収益を、正しい期に振り分ける」という前受収益・未収収益の役割を押さえておきます。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

前払費用・未払費用は家庭が「払う」経過勘定、前受収益・未収収益は家庭が「受け取る」経過勘定だよ。給与収入だけの家庭には出てこないけど、駐車場や定期預金みたいに時間で発生する収入があるなら関係してくるんだ。

前受収益 - 駐車場代を1年分前受けした場合の仕訳

近所の人に月極駐車場を貸していて、2026年10月1日に向こう1年分(2026年10月分から2027年9月分まで、月10,000円×12ヶ月)の駐車場代120,000円をまとめて受け取った例で考えます。家計の会計期間は1月から12月です。

例1 2026年10月1日、駐車場代120,000円を口座で受け取った

受け取った時点の仕訳
借方金額貸方金額
普通預金120,000円受取地代120,000円

受け取った時点では、まだ12ヶ月分すべてが今年の収益なのか判断できないため、いったん全額を受取地代として計上します。この段階では特に難しいことはなく、現金が入ってきた分をそのまま収益に記録するだけです。

例2 2026年12月31日、決算整理で未経過分を前受収益に振り替える

12月31日の決算日時点で、120,000円のうち実際に今年(10月・11月・12月の3ヶ月分)に対応するのは30,000円だけです。残り9ヶ月分の90,000円は、来年1月から9月にかけて発生する収益を先取りして受け取っているだけなので、今年の収益から取り除く必要があります。

決算整理仕訳(前受収益の計上)
借方金額貸方金額
受取地代90,000円前受収益90,000円

この仕訳によって、今年の受取地代は120,000円から90,000円が減って30,000円になり、実際に今年発生した分だけが損益計算書に残ります。取り除いた90,000円は、前受収益という負債の科目に姿を変えて貸借対照表に残ります。「まだ提供していないサービスの対価を先に受け取っている」状態は、家庭にとって将来返済義務があるわけではありませんが、簿記上は収益をまだ計上できない負債として扱う決まりになっています。

例3 2027年1月1日、翌期首の再振替仕訳

前受収益として貸借対照表に残した90,000円は、来年になれば実際に発生する収益です。そこで翌期首の1月1日付で、決算整理仕訳とちょうど逆向きの仕訳を入れて、前受収益を来年の受取地代に戻します。これを再振替仕訳と呼びます。

翌期首の再振替仕訳
借方金額貸方金額
前受収益90,000円受取地代90,000円

この仕訳を入れ忘れると、来年1月から9月にかけて実際に駐車場を貸している期間の収益が家計に一切反映されないまま終わってしまいます。すでに受け取ったお金なので入金の仕訳はもう発生せず、再振替仕訳だけが唯一の記録になる点が見落としやすいところです。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

前受収益の仕訳は3本セットだよ。受け取った日に1本、決算日に未経過分を振り替えて1本、そして翌期首に元へ戻す再振替仕訳が1本。この3本目を忘れると、来年の収益がどこにも記録されないまま消えてしまうんだ。

未収収益 - 定期預金の利息が決算日にまだ入金されていない場合の仕訳

次は逆のケースです。元本1,000,000円、年利0.3%の定期預金を2026年6月1日に預け入れ、満期は2027年5月31日、利息は満期日に一括で受け取る契約とします。年間の利息は1,000,000円×0.3%で3,000円ですが、この3,000円は満期まで一切口座に入ってきません。

例1 2026年12月31日、決算整理で未収収益を計上する

決算日の12月31日時点では、預け入れから6月・7月・8月・9月・10月・11月・12月の7ヶ月が経過しています。年間3,000円の利息のうち7ヶ月分、3,000円×7/12で1,750円は、まだ口座に入っていなくても今年の家計がすでに稼いだ収益だと考えます。

決算整理仕訳(未収収益の計上)
借方金額貸方金額
未収収益1,750円受取利息1,750円

現金は動いていませんが、借方の未収収益という資産科目で「将来受け取る権利」を貸借対照表に計上し、貸方の受取利息で今年の収益として損益計算書に反映させます。前受収益とは貸借が逆になっている点に注目してください。前受収益は「受け取ったのにまだ収益にできない」ので負債、未収収益は「まだ受け取っていないのに収益にできる」ので資産です。

例2 2027年1月1日、翌期首の再振替仕訳

翌期首の再振替仕訳
借方金額貸方金額
受取利息1,750円未収収益1,750円

前受収益と同じく、決算整理仕訳の逆向きを翌期首に入れて未収収益をいったんゼロに戻します。

例3 2027年5月31日、満期で利息3,000円を受け取った

満期時に利息を受け取った仕訳
借方金額貸方金額
普通預金3,000円受取利息3,000円

満期日には受け取った3,000円をそのまま受取利息として計上します。すると2027年の受取利息は、1月1日の再振替でマイナス1,750円、5月31日の受取でプラス3,000円となり、差し引き1,250円が残ります。これはちょうど2027年1月から5月までの5ヶ月分(3,000円×5/12)にあたる金額で、2026年分の1,750円と合わせるとぴったり満期までの利息3,000円になります。再振替仕訳があるおかげで、二重計上も計上もれも起きずに、それぞれの年の家計にそれぞれの年に発生した分だけが収益として残ります。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

未収収益は前受収益とちょうど鏡合わせだよ。前受収益は「もらったけどまだ収益にできない」から負債、未収収益は「まだもらってないけど収益にしていい」から資産。再振替仕訳を挟むことで、満期にまとめて受け取っても各年の取り分がずれないんだ。

前受金・未収金と混同しやすいポイント

ここまでの前受収益・未収収益は、名前が似ている前受金・未収金としばしば混同されます。ふるさと納税の記事で扱った未収金は、翌年の住民税から控除される権利という、一度きりの取引から生まれる資産でした。一方、この記事の未収収益は、定期預金の利息のように時間の経過とともに継続して発生する収益が対象です。

前受金も同じ違いがあります。フリマアプリで先に代金を受け取ってからまだ発送していない商品がある場合、それは前受金です。これは「商品を渡す」という1回限りの義務に対する前受けなので、時間で按分する必要がありません。これに対して駐車場代の前受収益は「12ヶ月間貸し続ける」という継続的な義務に対する前受けなので、経過した月数で按分します。判断の分かれ目は、対象になっている取引が一度きりのモノやサービスの受け渡しか、それとも時間の経過に応じて連続的に発生するものかという点です。継続的なら収益・費用側は「〇〇収益」「〇〇費用」という経過勘定になり、一度きりなら「前受金」「未収金」のような単純な債権債務になります。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

見分け方は「時間で発生し続けるか、1回きりか」だよ。駐車場や利息みたいに時間で発生するなら前受収益・未収収益。フリマの発送待ちみたいに1回限りの取引なら前受金・未収金。名前が似ているからこそ、ここを混同する人がとても多いんだ。

ここまでの内容を、実際にBokiBookで仕訳してみましょう。

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BokiBookで前受収益・未収収益の決算整理を再現する

駐車場代を受け取った日や、利息の入金があった日の仕訳は、通常の仕訳入力画面からそのまま登録できます。借方・貸方それぞれに勘定科目と金額を入力し、貸借が一致すれば登録完了です。前受収益・未収収益という科目も、勘定科目の管理画面からあらかじめ登録しておけば、決算整理の仕訳でそのまま選べます。

BokiBookの仕訳入力画面。借方と貸方に勘定科目と金額を入力する
仕訳入力画面です。駐車場代を受け取った日の普通預金と受取地代の仕訳も、決算整理で受取地代を前受収益に振り替える仕訳も、この画面から同じ手順で入力します。貸借の金額が一致するまで登録できないため、按分の計算ミスにその場で気づけます。

面倒なのは、決算日にどの取引がいくら未経過なのかを洗い出す作業と、翌期首に再振替仕訳を入れ忘れないようにする管理です。BokiBookでは、設定画面で締めたい月を選んで自動決算を実行すると、損益振替などの決算整理仕訳をまとめて生成できます。前受収益や未収収益といった経過勘定の仕訳は自動では作られないため、決算を実行する前に手入力しておきます。決算を締めた後のデータはロックされるため、締めた後にうっかり過去の仕訳を書き換えてしまう事故も防げます。

BokiBookの各種設定画面上部。会計期間設定で対象年と対象月を選び、その下に自動決算整理仕訳の一括生成がある
各種設定画面の決算まわりの項目です。会計期間設定で締めたい月を選んで自動決算を実行すると、その月の損益振替などの決算整理仕訳がまとめて生成されます。前受収益や未収収益の按分は自動では計算されないため、決算の前に手入力で仕訳しておきます。決算を締めた月のデータはロックされ、過去の仕訳を誤って変更する事故も防止します。

前受収益・未収収益は、簿記3級の試験では頻出でも、家計簿では出番の少ない科目です。ですが駐車場や部屋を貸している家庭、定期預金や個人向け国債で利息を受け取っている家庭にとっては、毎年決算のたびに必ず向き合うことになる処理でもあります。前払費用・未払費用とあわせて、経過勘定の4種類を家計の実例で押さえておくと、簿記3級の決算整理の単元がぐっと理解しやすくなります。

どんぐり
どんぐりのまとめ

前受収益・未収収益は出番こそ少ないけど、駐車場や定期預金がある家庭では毎年必ず出てくる処理だよ。決算整理と再振替仕訳をセットで覚えておけば、来年も同じ手順でそのまま使えるはずだよ。