毎月の生命保険料を、家計簿に「保険料」という支出でひとまとめに記録している人は多いと思います。しかし終身保険や養老保険のような貯蓄型保険は、解約すればお金が戻ってくる仕組みを持っています。この記事では、貯蓄型保険料を複式簿記の資産科目として記録する考え方を、具体的な仕訳例で解説します。

生命保険料は「全額が費用」とは限らない

生命保険には、大きく分けて「掛け捨て型」と「貯蓄型」の2種類があります。多くの医療保険や定期保険は掛け捨て型で、保障の対価として払った瞬間に価値が消えていくお金です。これは全額を費用として扱って問題ありません。

一方、終身保険や養老保険、個人年金保険といった貯蓄型保険は、解約すれば「解約返戻金」というお金が戻ってくる仕組みを持っています。簿記3級の視点で見ると、この解約返戻金は将来お金として返ってくる価値、つまり「資産」です。貯蓄型保険の保険料を全額費用として計上してしまうと、実際には手元に資産価値が積み上がっているのに、家計簿の上では使って消えたお金として扱われてしまい、実態とズレが生じます。

たとえば毎月18,000円を終身保険に払い続けている家庭が、それを毎月18,000円の費用として10年間記録し続けると、損益計算書には合計2,160,000円もの「消えたお金」が積み上がります。ですが実際にはそのうちの大半が解約返戻金という形で今も手元に残っています。費用として記録した金額と、実際に残っている資産の金額が大きくズレたまま気づかないというのが、貯蓄型保険を全額費用にしてしまう最大の問題です。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

掛け捨て型は払ったら価値が消えるから費用。貯蓄型は解約すればお金が戻ってくるから資産。この違いを無視して全部「保険料」にまとめると、何年も払い続けた分がぜんぶ消えたお金に見えてしまうんだ。

掛け捨て部分と貯蓄部分を分けて考える

貯蓄型保険の保険料は、保障のための「危険保険料」部分と、積立に回る「貯蓄保険料」部分に分かれています。この割合は保険会社が契約時に渡す設計書、いわゆる解約返戻金の推移表を見ればおおまかに把握できます。複式簿記では、貯蓄に回る部分を「保険積立金」という資産科目、保障の対価として消える部分を「保険料」という費用科目に分けて記録します。

積立部分の割合は契約年数によって変わる

ここで多くの人がつまずくのが、積立部分の割合を一度決めたら固定してしまう点です。実際の貯蓄型保険は、契約から数年間は解約返戻金の増え方がゆるやかで、契約直後に解約すると払った保険料より返戻金が少ない、いわゆる元本割れの期間があります。契約10年目の設計書に基づいて「毎月の積立部分は15,000円」と決めても、その割合は契約1年目や2年目にはそのまま当てはまりません。

正確を求めるなら、契約書に添付されている返戻金推移表を毎年見直し、その年に対応する積立割合で仕訳することが望ましいです。ただし家計簿としてはそこまで厳密さを求めなくても構いません。おおまかな按分でも、全額を費用にしてしまうよりは実態に近づきます。重要なのは「この保険にはどれだけの資産価値が今眠っているか」を意識し続けることです。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

積立の割合は契約年数によって変わるから、一度決めた比率をずっと使い続けないこと。設計書の返戻金推移表を年に一度見直すのが理想だけど、無理なら「だいたいこれくらい積み立っている」というおおまかな感覚を持つだけでも、全額費用にするより実態に近づくよ。

家庭の取引を仕訳してみる

毎月18,000円の終身保険料を口座振替で支払っており、そのうち貯蓄部分が15,000円、保障部分(掛け捨て部分)が3,000円という契約を例に、仕訳を見ていきます。

例1 終身保険の保険料18,000円が普通預金から引き落とされた

毎月の保険料が引き落とされた時点の仕訳
借方金額貸方金額
保険積立金15,000円普通預金18,000円
保険料3,000円

普通預金という資産が18,000円減る一方、その大半の15,000円は保険積立金という別の資産に形を変えて残り、保障部分の3,000円だけが保険料という費用として損益計算書に計上されます。全額を保険料として処理する場合に比べて、家計の赤字幅が15,000円分小さく、実態に近い数字になります。

例2 掛け捨て型の医療保険料5,000円が普通預金から引き落とされた

掛け捨て型保険の保険料が引き落とされた時点の仕訳
借方金額貸方金額
保険料5,000円普通預金5,000円

解約返戻金がほとんどない掛け捨て型の医療保険や定期保険は、これまで通り全額を保険料という費用で計上して問題ありません。貯蓄性の有無を見極めて、仕訳を使い分けるのがポイントです。

例3 養老保険が満期を迎え、満期保険金80万円(積み立てた保険積立金は72万円)を受け取った

満期保険金を受け取った時点の仕訳
借方金額貸方金額
普通預金800,000円保険積立金720,000円
保険差益80,000円

これまでコツコツ積み立ててきた保険積立金という資産が、満期を機に普通預金という資産に姿を変えて戻ってきます。積み立てた金額を上回った差額8万円は保険差益という収益として計上します。これまでの保険料の一部が資産として記録されていたからこそ、満期時にどれだけ増えたのかが仕訳の上でも一目でわかります。

例4 資金が必要になり、途中で解約して解約返戻金60万円を受け取った(積み立てた保険積立金は68万円)

途中解約で解約返戻金を受け取った時点の仕訳
借方金額貸方金額
普通預金600,000円保険積立金680,000円
保険差損80,000円

満期を待たずに解約すると、契約から間もない時期の元本割れや、解約時の手数料の影響で、受け取れる金額が積み立ててきた保険積立金の残高を下回ることがあります。この場合は差額を保険差損という費用で計上します。満期まで持てば差益になるはずだった保険を早期に解約すると損失が出るという事実が、この仕訳を見ればはっきり数字に表れます。積立金を全額費用にしていた場合はこの損失自体が見えず、単に「まとまった臨時収入が入った」というだけの記録で終わってしまいます。

どんぐり先生
どんぐり先生のまとめ

満期なら保険差益、途中解約で積立額を下回ったら保険差損。どちらも「受け取った金額」と「積み立ててきた保険積立金の残高」の差を見ればすぐ分かるよ。積立金をきちんと資産として記録していたからこそ、この差が計算できるんだ。

資産として記録するメリット

ここまでの内容を、実際にBokiBookで仕訳してみましょう。

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BokiBookで保険積立金を管理する

BokiBookでは、勘定科目の管理画面から「保険積立金」のような資産科目を自由に登録できます。毎月の保険料引き落としは、貯蓄部分を保険積立金、保障部分を保険料として1つの取引の中で貸方・借方に振り分けて入力するだけで、貸借対照表と損益計算書の両方に自動で反映されます。

BokiBookの総勘定元帳。保険積立金が毎月15,000円ずつ積み上がっている
保険積立金の総勘定元帳です。毎月の保険料のうち積立に回る15,000円だけが積み上がり、残高が15,000円、30,000円、45,000円と増えていきます。保険会社からの通知を待たなくても、いま貯まっている金額が分かります。
BokiBookの仕訳入力画面。借方と貸方に勘定科目と金額を入力する
仕訳入力画面です。借方の+を押して行を増やせば、保険積立金と保険料のように借方が2行に分かれる仕訳もそのまま入力できます。貸借の金額が一致するまで登録できないため、按分の計算ミスにもその場で気づけます。

貯蓄部分と保障部分の内訳が契約書ですぐにわからない場合は、大まかな割合で按分しても、複式簿記のしくみそのものは変わりません。「〇〇生命の保険料18,000円、うち15,000円は積立分」のように話しかけるだけで仕訳案を提案してくれるAIチャット仕訳機能を使えば、毎月の按分入力も数秒で済ませられます。積立金の残高は貸借対照表の資産の部にそのまま表示されるので、何年も払い続けている保険に、今どれだけの資産価値が積み上がっているのかを、確定申告や更新のタイミングで見返すだけでなく、いつでも確認できます。

どんぐり
どんぐりのまとめ

保険積立金という科目をひとつ作っておけば、毎月同じ形で記録できるよ。貸借対照表を見れば、預金とは別に保険の中にいくら資産が眠っているかが分かる。解約や満期のときも、損したのか得したのかがすぐに計算できるんだ。