スマホ本体の分割払いは、毎月の通信料金と合算されて口座から引き落とされます。そのため家計簿では「今月の通信費が高かった」で片づけてしまいがちですが、実態は違います。購入した月に端末という資産を手に入れ、同時に分割払いという負債を負っただけで、毎月の引き落としの多くは負債の返済です。複式簿記でこの2つを分けて記録する方法を、具体的な金額と仕訳で解説します。
なぜ「通信費」で片づけると実態とズレるのか
2019年の電気通信事業法改正により、携帯電話の端末代金と通信料金の完全分離が義務化され、いわゆる「実質0円」での端末販売はほぼ姿を消しました。現在は総務省の規制により、端末購入を条件にした値引きは定価の一部までしか認められていません。つまり多くの人にとって、端末代は以前よりはっきりと自分の負担として残るようになっています。
たとえば129,600円のスマートフォンを24回の分割払いで購入すると、月々5,400円が端末代金として通信料金に上乗せされ、合算で口座から引き落とされます。単式簿記の家計簿では、この引き落とし全額をそのまま「通信費」という支出に計上してしまいます。しかし実際に起きているのは、購入した月に129,600円の資産を得て、同時に129,600円の分割払いの負債を負ったという1回の取引と、その負債を毎月5,400円ずつ返済しているという24回の取引です。毎月の返済を丸ごと通信費という費用にしてしまうと、端末を買った瞬間に発生している「資産と負債」という実態が家計簿のどこにも残りません。
この記録のズレは、分割払いが終わった翌月に表面化します。24回払いが終わった月を境に、通信費の請求額だけが急に安くなったように見えます。実際には支出の性質が変わったのではなく、負債の返済が終わっただけなのですが、単式簿記ではその理由を後から追いかけることができません。
毎月の引き落としを全部「通信費」にすると、端末を買った瞬間に増えた資産と負債がどこにも記録されないよ。分割払いが終わった月に通信費が急に安くなって、あれ何でだっけ、となるのはこのせいなんだ。
資産の取得と未払金の返済に分けて仕訳する
複式簿記では、端末を購入した時点で資産の増加と負債の増加を同時に記録します。器具備品のような資産科目で端末を計上し、相手科目には分割払いの残額を未払金として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 器具備品 | 129,600円 | 未払金 | 129,600円 |
この時点ではまだ現金は動いていません。資産と負債が同じ金額だけ両建てで増えるだけです。
通信料金と分割金が同じ請求書にまとまっている場合の按分
実際の請求書は、基本料金やデータ通信料といった純粋な通信費と、端末の分割金がひとつの金額にまとまって発行されます。たとえば基本料金3,278円とデータ通信料2,079円を合わせた通信費5,357円に、端末の分割金5,400円を足した合計10,757円が、口座振替の1回分として引き落とされる場合、これは通信費と未払金の返済という性質の違う2つの支出が混ざった複合仕訳になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 5,357円 | 普通預金 | 10,757円 |
| 未払金 | 5,400円 |
借方の合計10,757円と貸方の10,757円が一致していることを確認してください。請求書を1本まとめて通信費に入れてしまうと、この5,400円分だけ通信費が実態より多く見え、未払金の残高も実際より早く減っているように見えてしまいます。請求書の内訳欄で端末代金の項目を確認し、そこだけ切り分けるひと手間が必要です。
請求書が1枚にまとまっていても、仕訳は2行に分けるんだよ。通信費の分と、端末の分割金の分。ここを1本の通信費にしてしまうと、未払金の残高がいつの間にか実態とズレていくよ。
端末代金は減価償却するべきか、重要性の原則で判断する
器具備品として計上した129,600円は、本来なら耐用年数にわたって減価償却するべき資産です。ただし家計簿は税務申告のための帳簿ではないため、法人や個人事業主が従う減価償却のルールにそのまま縛られる必要はありません。ここで役に立つのが、簿記の「重要性の原則」という考え方です。金額が小さいものにまで厳密な処理を適用しても、事務の手間が増えるばかりで家計を把握するうえでの有用性はさほど上がらないため、金額に応じて簡便な処理を選んでよい、という考え方です。
目安として、個人事業主向けの税制にある「10万円未満は取得した年に全額費用にできる」「10万円以上20万円未満は3年均等で費用配分できる一括償却資産にできる」という基準を、家計にも借用すると考えやすくなります。これはあくまで参考にする目安であり、家計簿にこの税制上の基準への準拠が義務づけられているわけではない、という点を混同しないよう注意してください。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 48,000円 | 未払金 | 48,000円 |
10万円未満なので、器具備品として資産計上せず、購入した時点で全額を費用にしてしまって構いません。減価償却費を毎月計算する手間をかけるほどの金額ではない、というのが重要性の原則の考え方です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 3,600円 | 減価償却累計額 | 3,600円 |
129,600円を36か月で均等に割ると、月あたり3,600円です。一括償却資産の考え方を借用する場合、耐用年数表のような細かい年数の判定は不要で、取得価額を3年で均等に費用化するだけなので、家計での運用も比較的簡単です。
分割払いの返済期間と減価償却期間がズレる点に注意
ここでつまずきやすいのが、分割払いは24回、つまり2年で完済するのに対して、費用配分は36か月、つまり3年かけて行うという期間のズレです。24回払いが終わった25か月目以降も、未払金の返済は無くなる一方で、減価償却費の計上だけがあと12か月分続きます。負債を返し終えたのに費用がまだ発生するのは矛盾しているように見えますが、実際には端末という資産をまだ使い続けている以上、その資産の価値が減っていく分を費用として認識し続けているだけなので、おかしなことではありません。支払いが終わった月に「もう費用も終わり」と思い込んで減価償却費の入力をやめてしまうと、資産の帳簿価額がいつまでも高いまま残ってしまいます。
10万円より安い端末はその場で費用にしちゃってOK。10万円を超えたら3年で均等に費用配分するのがおすすめだよ。ただし支払いが24回で終わっても、費用配分は36か月続く場合があるから、払い終わった後も止めないでね。
機種変更で残債が一括請求されたときの仕訳
分割払いの途中で機種変更をすると、多くのキャリアでは残っている分割金の残債が一括で請求されます。129,600円を24回払いで購入し、14か月分を払い終えた時点で機種変更した場合、残りは10回分なので、残債は5,400円×10回で54,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 54,000円 | 普通預金 | 54,000円 |
これで負債である未払金はゼロになりますが、資産である器具備品はまだ帳簿に残ったままです。14か月分の減価償却費、3,600円×14か月で50,400円をすでに費用計上しているので、帳簿価額は129,600円から50,400円を差し引いた79,200円です。この古い端末を下取りに出す場合、下取り価格と帳簿価額の差額を、資産を手放したことによる損益として計上する必要があります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 15,000円 | 器具備品 | 79,200円 |
| 固定資産売却損 | 64,200円 |
下取りに出さずにそのまま手元に残す場合や廃棄する場合は、下取り収入が無いので、帳簿価額79,200円をそのまま「固定資産除却損」として費用に落とします。どちらのケースでも、資産として計上していた金額を家計簿からきちんと消し込む作業が必要になる、という点は共通しています。
機種変更で残債を一括で払うのは、負債を消す仕訳だよ。でも資産として残っていた端末の帳簿価額は、それとは別に消し込まないと帳簿に残り続けちゃう。下取りに出すなら売却損、出さないなら除却損として費用にするんだ。
この考え方を使うメリット
- 通信費の実態が見えます。端末の分割金を通信費から切り離すことで、損益計算書の通信費が本当の通信料金だけになり、分割払いが終わった月に費用が急に減った理由も追いかけられます。
- 今どれだけ端末代が残っているか一目でわかります。貸借対照表に未払金の残高が表示されるので、複数の端末を分割購入していても、それぞれの残債を混同せずに管理できます。
- 機種変更のタイミングを判断しやすくなります。未払金の残高を見れば、あと何回で払い終わるかが一目でわかるため、残債が大きいうちに解約すると一括請求が発生することも事前に把握できます。
BokiBookでスマホの分割払いを管理する
BokiBookの仕訳入力画面では、借方と貸方をそれぞれ複数行に分けて入力できます。通信料金と端末の分割金が合算で引き落とされる仕訳のように、貸方が1行で借方が2行に分かれる仕訳も、そのまま登録できます。
10万円を超える端末を3年均等で費用配分する場合は、各種設定の固定資産台帳に登録しておくと、毎月の減価償却費の仕訳を自動で作成できます。金額や償却方法が違う資産を複数登録しても、それぞれ独立して管理されます。
分割払いの残債は、貸借対照表の負債の部に未払金として表示されます。機種変更で残債を一括返済したときも、その返済の仕訳を1件入力するだけで残高がゼロに戻り、資産側の器具備品を消し込む仕訳と合わせて、家計の記録がきれいに整います。
端末代を通信費に混ぜず、資産と負債として別に記録しておくと、機種変更のタイミングで慌てずにすむよ。残債がいくら残っているか、貸借対照表を見ればすぐわかるからね。