家計簿アプリの多くは、今月いくら使ったかしか教えてくれません。BokiBookには損益計算書と貸借対照表という2つのレポートがあり、この2枚を並べて初めて家計の全体像が見えます。それぞれ何を答えてくれる書類なのかを解説します。
1か月の収支だけを見ていると判断を誤る
ある月、収入が25万円で支出が30万円だったとします。5万円の赤字です。この数字だけを見れば、使いすぎた月だと判断したくなります。
ですが支出30万円の内訳が、生活費20万円と投資信託の購入10万円だったとしたらどうでしょうか。投資信託の10万円は消えたわけではなく、現金という形から投資信託という形に変わっただけです。家計全体で見れば財産は減っていません。むしろ生活費は収入の範囲に収まっていて、健全な月と言えます。
逆のパターンもあります。収入25万円、支出20万円で5万円の黒字に見える月でも、その裏でクレジットカードの残債が8万円増えていれば、家計は実質的に悪化しています。収支だけを見ていると、この2つを見分けられません。
必要なのは2つの視点です。1か月の間にいくら稼いでいくら使ったかという流れの視点と、その結果としていま何をどれだけ持っているかという蓄積の視点です。前者を受け持つのが損益計算書、後者が貸借対照表です。
収支だけ見ていると、投資でお金が減ったのか、生活費で消えたのかの区別がつかないんだ。流れを見る損益計算書と、残高を見る貸借対照表。この2枚がそろって初めて家計の全体像になるよ。
損益計算書が答えてくれること
損益計算書は、決められた期間にいくら稼ぎ、いくら使い、差し引きいくら残ったかを示します。BokiBookでは月単位または年単位で切り替えられます。
見るべき場所は3つあります。最上部の当期純利益、収益の部、費用の部です。当期純利益がプラスなら、その月は稼いだ範囲で暮らせています。マイナスなら貯蓄を取り崩しています。
重要なのは、この書類に載るのは収益と費用だけだという点です。投資信託を10万円買っても、損益計算書には何も現れません。現金が投資信託に変わっただけで、費用が発生していないからです。同じように、貯金を口座に移しても、住宅ローンの元本を返しても、損益計算書は動きません。
ここが単式簿記の家計簿との決定的な違いです。単式の家計簿は、お金が出ていけばすべて支出として記録します。だから投資も貯金もローン返済も、全部まとめて使ったお金になってしまい、本当の生活費が分からなくなります。損益計算書は、価値が消えたものだけを費用として集めるため、生活の実態が数字に出ます。
損益計算書に載るのは「価値が消えたもの」だけ。投資も貯金もローンの元本返済も、この書類には出てこないんだ。だからここに出てくる費用合計が、本当の生活費ということになる。
貸借対照表が答えてくれること
貸借対照表は、ある時点で何をどれだけ持ち、いくら借りているかを示します。期間ではなく、日付をひとつ決めて撮る家計のスナップショットです。
構成は3つの部に分かれます。資産の部には現金、預金、投資信託、保険積立金など持っているものが並びます。負債の部にはクレジットカードの未払金や住宅ローンなど返す義務のあるものが並びます。そして資産から負債を引いた残りが純資産の部です。
この純資産こそが、家計にとっての本当の財産です。預金が500万円あっても住宅ローンが3,000万円残っていれば、純資産はマイナスです。逆に預金が少なくても、投資信託と自宅の価値が負債を上回っていれば純資産はプラスです。貯金額だけを見ていては分からない立ち位置が、ここで分かります。
貸借対照表には必ず成り立つ関係があります。資産の合計が、負債と純資産の合計に一致するという関係です。上の画面でも資産合計34,206,834円に対し、負債の部と純資産の部を合わせた合計も同じ34,206,834円で一致しています。これが崩れることはありません。仕訳を必ず借方と貸方の両方に同じ金額で記録しているからです。
貸借対照表で一番大事なのは純資産だよ。預金がいくらあるかではなく、全部の財産から借金を引いて何が残るか。これが家計の本当の立ち位置なんだ。
冒頭の例を仕訳で確かめる
最初に挙げた、支出30万円のうち10万円が投資信託だったという例を、実際の仕訳で見てみます。生活費20万円と投資信託10万円は、記録のされ方がまったく違います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 食費など | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
借方に費用が立ちます。費用は損益計算書に載るので、この20万円は当期純利益を押し下げます。価値が消えたお金だからです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資信託 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
こちらは借方も貸方も資産です。普通預金という資産が10万円減り、投資信託という資産が10万円増えただけなので、損益計算書には何も現れません。貸借対照表の中で、資産の置き場所が移動したにすぎないからです。
結果として、この月の損益計算書は収入25万円から費用20万円を引いた5万円の黒字になります。単式の家計簿なら5万円の赤字と表示されていた月が、実際には5万円の黒字だったと分かります。同じ現実を記録していても、記録の方法が違うと結論が逆になる、という分かりやすい例です。
2枚はつながっている
この2つは別々の書類ではありません。損益計算書の当期純利益が、貸借対照表の純資産を増やします。決算整理を行うと、損益計算書で計算された当期純利益が、そのまま貸借対照表の繰越利益剰余金として現れます。
関係を言葉にすると、損益計算書は純資産が1か月でどれだけ増えたかの説明書であり、貸借対照表はその積み上がった結果の残高表です。毎月の当期純利益が積もって純資産になり、純資産が増え続けている状態が、家計がうまくいっている状態です。
どちらか一方だけを見る習慣がつくと判断を誤ります。損益計算書だけを見ていると、黒字なのに借金が増えている状況を見逃します。貸借対照表だけを見ていると、純資産がなぜ増えたのか、あるいはなぜ減ったのかが分かりません。
月末に2枚を並べて、当期純利益がプラスか、純資産が先月より増えているか、この2点を確認する。それだけで家計の状態はほぼ把握できます。総勘定元帳の使い方を覚えておくと、気になる数字の内訳まで追えるようになります。
月末にやることは2つだけ。当期純利益はプラスか、純資産は先月より増えたか。この2つを確認する習慣がつけば、家計の状態を見失うことはなくなるよ。