賞与(ボーナス)が振り込まれると、手取り額だけを家計簿に「収入」として記録していないでしょうか。それでは額面のうちどれだけが社会保険料や税金で消え、どれだけが本当に家計に残ったのかが分からなくなります。さらに、賞与の源泉所得税は実は「概算」にすぎず、翌年の年末調整で精算される、というつまずきやすい論点もあります。具体的な金額で仕訳を組み立てながら整理します。
賞与は「額面」と「手取り」の差が大きい特殊な収入
賞与は、毎月の給与とは別に受け取る臨時収入です。しかし多くの家計簿アプリでは、振り込まれた「手取り額」だけをそのまま「収入」として記録してしまいます。これでは、実際にいくら稼いで、いくらが社会保険料や税金として天引きされたのかが分からず、賞与の本当の姿を家計簿から読み取れません。
たとえば額面40万円の賞与から社会保険料と税金の合計8万円が天引きされ、手取り32万円が振り込まれたとします。手取りの32万円だけを収入として記録すると、実際に稼いだ40万円のうち2割が天引きされたという事実が消え、翌年に賞与額が変わっても手取りベースの比較しかできません。簿記では、賞与も給与と同じように「額面(総支給額)」を収益として記録し、天引きされる社会保険料・所得税・住民税は別の科目として差し引く、という発想で仕訳します。手取り額だけを見るのではなく、いくら稼いでいくら天引きされたのかを分けて記録することで、家計の実態がより正確に見えてきます。
給与と同じ「収益」だが、天引き項目が多い
毎月の給与も賞与も、勘定科目としては「給与収入」という収益科目でまとめて記録して問題ありません。賞与特有の点は、社会保険料率が毎月の給与と異なる場合があることと、賞与の一部を貯蓄や投資に回す家庭が多いことです。加えて、健康保険や厚生年金の保険料には「標準賞与額」という上限があり、年間の賞与合計が一定額を超えても、それ以上は保険料の対象になりません。天引き額が単純に賞与額に比例するとは限らない、という点も覚えておくと、天引き額が思ったより少なかったときに戸惑わずに済みます。
手取り32万円だけを収入にすると、本当は40万円稼いでいた事実が消えてしまうんだ。額面を収益、天引き分を費用として分けて記録すれば、稼いだ額と引かれた額、両方が家計簿に残るよ。
家庭の取引を賞与の視点で仕訳してみる
額面40万円の賞与から社会保険料と税金が天引きされ、手取り32万円が普通預金口座に振り込まれたケースで考えてみます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 320,000円 | 給与収入 | 400,000円 |
| 社会保険料・税金 | 80,000円 |
借方の合計は普通預金320,000円と社会保険料・税金80,000円を合わせて400,000円、貸方の給与収入400,000円と一致します。手取り320,000円だけが普通預金に入り、残り80,000円は「社会保険料・税金」という費用科目でその場で差し引かれる、という1つの複合仕訳として記録するのが簡単です。BokiBookでは「賞与40万円、手取り32万円」と入力すれば、この内訳を含めた仕訳案を提案してくれます。額面を収益として記録しておくことで、損益計算書を見れば今年の賞与でいくら稼いだかがひと目で分かります。
手取りの賞与32万円のうち10万円をNISA口座に、5万円を定期預金に振り分けた場合も見てみましょう。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 有価証券(NISA) | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
| 定期預金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
この2行は、いずれも資産どうしの振替であり、損益計算書には影響しません。普通預金という「すぐ使えるお金」が、NISAや定期預金という「増やす・貯めるためのお金」に姿を変えただけだからです。賞与を受け取った月に「今月はいくら貯蓄・投資に回せたか」を振替仕訳として記録しておくと、使ってしまった分と貯蓄に回した分を混同せずに把握できます。
NISAや定期預金への振り分けは、普通預金という資産が形を変えただけ。だから損益計算書には出てこないんだ。「使った分」と「貯めた分」を混同しないためにも、振替仕訳として記録しておくのがポイントだよ。
天引きされた所得税は「概算」にすぎない
この記事だけの論点として、賞与から天引きされる所得税の性質を押さえておきましょう。賞与の所得税は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率表」に基づき、前月の給与額と扶養親族の数から決まる税率を賞与額にかけて計算されます。これはあくまで概算であり、確定した年間の税額ではありません。実際の所得税額は、年末に1年分の収入と控除をまとめて計算する年末調整で確定します。
つまり、賞与を受け取った時点で天引きされた所得税は、いったん多めに(あるいは少なめに)引かれている可能性があるお金です。年末調整の結果、天引きされすぎていれば12月の給与や賞与で還付され、不足していれば追加で徴収されます。ここで家計簿の入力に迷うのが、賞与を受け取った8月の時点では、この過不足がまだ確定していないという点です。BokiBookでの記録自体は、天引き時点では「社会保険料・税金」としてそのまま費用計上しておき、年末調整の結果が給与明細に反映された月に、還付や追徴の差額だけを追加で仕訳する、という2段階の考え方で対応できます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 5,000円 | 給与収入 | 5,000円 |
還付された5,000円は、12月の給与に上乗せされる形で振り込まれるのが一般的です。天引き時点で費用として計上しすぎていた社会保険料・税金の一部が戻ってきたと考えれば、貸方を給与収入として追加計上するだけで処理が完結します。逆に追徴だった場合は、借方に社会保険料・税金を追加計上し、貸方を普通預金にします。毎月の給与から天引きされる所得税と違い、賞与の天引きは概算にすぎないという前提を知っておくだけで、12月に金額がずれても慌てずに対応できます。
賞与から引かれる所得税は、あくまで概算なんだ。確定するのは年末調整のあと。天引き時点でいったん費用にしておいて、年末調整で還付や追徴が出たら、その差額だけを追加で記録すればいいよ。
額面で記録するメリット
- 年収の実態が損益計算書に表れます。手取りだけでなく額面を収益として記録するため、税金や社会保険料を含めた本当の稼ぎが把握できます。転職や昇給で額面が変わったときも、手取りの増減に惑わされず比較できます。
- 天引き額の推移を比較できます。社会保険料や税金がいくら天引きされているかを費用として記録しておけば、年ごとの負担の変化にも気づきやすくなります。標準賞与額の上限に達している年は、賞与が増えても社会保険料が横ばいになる、といった変化も追えます。
- 貯蓄・投資に回した分が可視化されます。賞与の使い道を資産の振替として記録することで、「使った分」と「増やした分」を貸借対照表上ではっきり分けられます。
BokiBookで賞与を管理する
BokiBookでは、AIチャット仕訳機能に「賞与40万円、手取り32万円が振り込まれた」のように話しかけるだけで、給与収入と天引き額を分けた仕訳案を提案してくれます。手取り額しか分からない場合でも、額面の目安が分かれば天引き分をまとめて記録できるので、まずは手取り額だけで記録を始めても構いません。
賞与を受け取ったあとNISAや定期預金に振り分ける場合も、普通預金からの振替として数タップで記録できます。額面を収益として記録し続けていれば、月次の損益計算書にも給与収入としてまとめて反映されます。
貸借対照表・損益計算書レポートを見れば、賞与を含めた年間の収益の推移と、そのうちどれだけを資産の積み立てに回せたかを、あとから振り返って確認できます。
賞与は額面で記録、天引きは費用として分ける、年末調整のズレは差額だけ追加する。この3つを押さえておけば、年に1、2回しかない賞与でも記録に迷わなくなるよ。