試算表は、仕訳から転記までのミスを月末にまとめて見つける検算表です。ただし借方合計と貸方合計が一致していても、すべてのミスが防げるわけではありません。家庭の取引を例に、試算表がどんなミスを見つけられて、どんなミスは見つけられないのかを確認します。
試算表とは?仕訳から転記までのミスを月末にまとめて見つける表
簿記では、日々の取引をまず仕訳帳に記録し、それを勘定科目ごとの総勘定元帳へ転記していきます。この記録してから転記するという2段階の作業のどこかで、金額を書き間違えたり、片方の科目だけ転記し忘れたりするミスが起こり得ます。こうしたミスを月末や期末にまとめて見つけるために作成するのが試算表です。
簿記には、1つの取引を借方・貸方の両方に同じ金額で記録するという大原則があります。この原則を守っている限り、すべての勘定科目の借方合計と貸方合計は必ず一致します。試算表は、総勘定元帳にある全科目の金額を1枚の表に集計し、この借方合計と貸方合計が本当に一致しているかを確認するための検算表です。一致していれば少なくとも貸借バランスは崩れていないことが確認でき、一致していなければ、どこかの取引で転記漏れや金額の写し間違いが起きているサインになります。
簿記3級では、試算表には3つの種類があると学びます。各科目の借方・貸方それぞれの合計額を集計する合計試算表、各科目の最終的な残高だけを集計する残高試算表、そして両方を1枚にまとめた合計残高試算表です。試験でも実務でも、この3種類のうちどれかを作る問題や場面によく出会います。
試算表がやっているのは、たった1つの確認だよ。借方合計と貸方合計が本当に一致しているかどうか。この2つの数字を月末に見比べるだけで、転記漏れや金額の写し間違いに気づけるんだ。
なぜ家計の簿記でも試算表の考え方が役立つのか
単式簿記の家計簿は、たとえば食費を3,000円払ったという1行だけで記録するタイプです。このやり方には、そもそも検算という発想がありません。入力した金額が正しいかどうかは、レシートと1件ずつ照合する以外に確かめる方法がないのです。
一方、簿記のロジックで家計をつける家計簿では、借方合計と貸方合計が必ず等しくなるという数学的な制約があります。この2つの数字を月末に見比べるだけで、入力全体に矛盾がないかを一括でチェックできます。1件ずつレシートと照合するのではなく、そもそも入力し忘れた仕訳がないか、借方・貸方どちらかしか登録していない仕訳がないかを、合計額の一致・不一致という形で機械的に発見できるのが、試算表の考え方を家計に応用する最大のメリットです。
単式簿記の家計簿にはそもそも検算という発想がないんだ。借方合計と貸方合計を比べるという1つの作業で、レシート1件ずつの照合をしなくても入力全体の矛盾に気づけるのが、試算表を家計に持ち込む一番のメリットだよ。
家庭の取引で試算表の検算を体験してみる
4月にあった3つの家計の取引を例に、試算表がどうミスを見つけるのかを見てみましょう。
取引1 4月1日、給与30万円が普通預金に振り込まれた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | 給与収入 | 300,000円 |
取引2 4月5日、食費8,000円をクレジットカードで支払った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 食費 | 8,000円 | クレジットカード未払金 | 8,000円 |
取引3 4月10日、電気代6,000円が口座から引き落とされた
ここで入力ミスが起こったとします。本来は水道光熱費6,000円と普通預金6,000円の両方の科目に記録すべきところ、借方の水道光熱費だけを入力し、貸方の普通預金への記録を忘れてしまいました。この状態のまま、月末に全科目の残高を集計した残高試算表を作ってみると、次のようになります。
| 科目 | 借方残高 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | |
| 食費 | 8,000円 | |
| 水道光熱費 | 6,000円 | |
| 給与収入 | 300,000円 | |
| クレジットカード未払金 | 8,000円 | |
| 合計 | 314,000円 | 308,000円 |
借方合計314,000円に対して貸方合計は308,000円で、差額はちょうど6,000円です。この一致していない状態こそが、水道光熱費の貸方にあたる普通預金からの引き落としを記録し忘れているというミスのサインです。もし試算表を作らずにいたら、このズレに気づかないまま月をまたいでしまい、後から原因を探すのがずっと大変になっていたはずです。忘れていた普通預金6,000円を貸方に追加すれば、借方・貸方とも314,000円で一致し、この月の記録にはもう矛盾がないと確認できます。
差額6,000円という数字そのものが、探すべき仕訳の金額を教えてくれているんだ。合計がズレたら、ズレた金額と同じ額の仕訳をどこかで片方だけ記録し忘れていないか探せばいい。差額の大きさが手がかりになるよ。
試算表の一致だけでは見つけられないミスもある
試算表が発見できるのは、借方合計と貸方合計がズレるタイプのミスだけです。逆に言うと、借方と貸方の金額が同額のまま記録されてしまうミスは、試算表を作っても見つかりません。
代表的なのが、科目を取り違えるミスです。たとえば4月20日に日用品費3,000円を普通預金から支払ったのに、誤って食費3,000円・普通預金3,000円として登録してしまったとします。借方に3,000円、貸方に3,000円が記録されている点は正しいので、試算表の借方合計と貸方合計は一致したままです。試算表を見る限り、この月の記録には何の問題も無いように見えます。ところが実際には、食費の残高が3,000円多く、日用品費の残高が3,000円少ないという誤りが残っています。
もう1つの例が、金額の桁を間違えて借方・貸方の両方に同じ誤った金額を記録してしまうケースです。30,000円の取引を借方3,000円・貸方3,000円と両方とも1桁少なく記録すれば、これも借方合計と貸方合計は一致したまま、家計全体の数字だけが実態より少なくずれます。
こうしたミスに気づくには、試算表の一致・不一致を見るだけでは足りません。各科目の残高が、預金口座の実際の残高や、クレジットカードの利用明細と一致しているかを、月に一度は照らし合わせる必要があります。試算表は転記の抜け漏れを見つける道具であり、科目の選び間違いや金額の桁の間違いを見つける道具ではない、という違いを理解しておくことが大切です。
借方と貸方に同じ間違った金額を書いてしまうミスは、試算表では絶対に見つからないんだ。科目を取り違えたときも、桁を間違えたときも、貸借は崩れないまま記録が残ってしまう。試算表と、口座やカードの明細との照合は、どちらも必要な別のチェックだよ。
BokiBookなら試算表がズレることそのものが起こらない
BokiBookでは、仕訳を1件入力するたびに借方合計と貸方合計が自動でチェックされ、金額が一致していない仕訳や、借方・貸方のどちらかしか入力されていない仕訳はそもそも保存できない仕組みになっています。つまり紙の帳簿や単式簿記の家計簿のように、月末にまとめて検算し、ズレの原因を過去に遡って探すという作業自体が、入力の時点で先回りして防がれています。
ただし前の章で見た、科目の取り違えや金額の桁違いのように借方・貸方の金額が同額のまま記録されるミスは、貸借一致のチェックだけでは防げません。この種のミスに気づくには、貸借対照表・損益計算書の見方の記事で紹介している画面で、各科目の残高を実際の口座残高やカードの利用明細と見比べる作業がやはり必要です。
特定の1科目だけをもっと詳しく遡りたいときは、総勘定元帳の見方・使い方の記事で紹介している画面から、その科目の仕訳を1件ずつ確認できます。食費の残高が思ったより多いと感じたら、総勘定元帳を開いて日用品費と紛れていないか確認する、という使い方です。借方・貸方の基本的な考え方をまだ整理しきれていない場合は、借方・貸方の覚え方の記事もあわせて読んでみてください。
BokiBookは貸借が崩れる入力そのものを防いでくれるよ。でも科目を間違えて同じ金額で登録してしまうミスは自分で気づくしかない。月に一度、貸借対照表と損益計算書の残高を実際の口座やカードの明細と見比べる習慣をつけておこう。