iDeCoの掛金は、毎月決まった額が口座から引き落とされます。家計簿にそのまま「支出」として記録すると、老後のために積み立てているだけなのに毎月赤字が続くように見えてしまいます。複式簿記で資産として記録する方法と、家計簿の残高が証券会社の画面と一致しない理由を解説します。
iDeCoの掛金は「支出」ではなく「将来使える資産」
iDeCo(個人型確定拠出年金)で毎月の掛金を積み立てている人は増えていますが、家計簿アプリの多くはこの引き落としを「保険料」や「その他支出」としてまとめて記録してしまいます。しかし掛金は消えてなくなるお金ではなく、自分名義の年金口座に積み立てられている資産です。仮に毎月23,000円を拠出しているとすると、単式簿記の家計簿では1年間で276,000円が「使ったお金」として計上され続けることになります。実際には貯まっているだけなのに、通帳の残高が減っていく様子だけを見て、家計が苦しくなっていると錯覚してしまう人は少なくありません。
簿記3級で学ぶ複式簿記では、iDeCoの掛金は「iDeCo(確定拠出年金)」という資産科目で管理します。普通預金という資産が、同じ資産であるiDeCoの残高に交換されただけなので、資産の合計額(=貸借対照表に載る純資産)は掛金の拠出前後で変わりません。
NISAとの違いは「引き出せるタイミング」
同じ「資産の積み立て」でも、NISAとiDeCoでは性質が異なります。NISAはいつでも売却して現金化できる資産ですが、iDeCoは原則60歳になるまで引き出せません。複式簿記で資産科目を分けて管理しておくと、今すぐ使えるお金と老後のために動かせないお金を混同せずに把握できます。この区別ができるのは、勘定科目を自由に分けられる複式簿記ならではのメリットです。
iDeCoの掛金は消えたお金じゃなくて、置き場所が変わっただけの資産だよ。支出として記録すると毎月赤字に見えて続けるのが不安になるから、必ず資産科目で振替にしよう。NISAとは引き出せる時期が違うから、科目も分けておくのがコツだよ。
家庭の取引をiDeCoの視点で仕訳してみる
毎月の掛金引き落としと、年末調整で戻ってくる還付金を例に、それぞれの仕訳を見ていきます。
例1 毎月27日、iDeCoの掛金23,000円が普通預金口座から引き落とされた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| iDeCo(確定拠出年金) | 23,000円 | 普通預金 | 23,000円 |
普通預金という資産が減り、iDeCoという資産が増えるだけなので、資産の合計額は変わりません。損益計算書にも影響しない、資産どうしの振替取引です。
例2 12月分の給与明細で、iDeCoの所得控除により源泉徴収税額が18,000円少なくなっていた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 18,000円 | 還付金収入 | 18,000円 |
iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれるため、その分だけ所得税・住民税の負担が軽くなります。会社員の場合、この控除は年末調整で処理され、12月の給与から天引きされる所得税がその分だけ少なくなる形で還付が実現するのが一般的です。つまり、別枠で振り込まれる「還付金」という単独の入金があるわけではなく、いつもの給与の手取り額が少し多くなっているだけです。ここに気づかず、掛金の節税メリットをどこにも記録しないまま終わってしまう人が多くいます。
自営業・フリーランスは還付の受け取り方が違う
この記事のいちばんの注意点はここです。会社員は年末調整で天引き税額が減る形で控除が実現しますが、自営業やフリーランスで確定申告をしている場合は、申告後に所得税の還付金として口座に振り込まれます。振り込まれた金額がそのまま「入ってきたお金」として目に見えるため、記帳を忘れにくい一方、会社員の場合は「給与がいつもよりちょっと多い」程度にしか見えないため、家計簿に反映し忘れがちです。源泉徴収票の「社会保険料等の金額」の欄や、年末調整の結果通知に記載された還付額を確認し、12月分の給与を記帳するタイミングで、還付金収入としてまとめて計上する習慣をつけると漏れを防げます。
会社員は還付金が振り込まれるんじゃなくて、12月の給与がちょっと多くなる形で戻ってくるんだ。振り込みが無いから記帳を忘れやすいけど、それだと節税の効果が家計簿のどこにも残らない。年末調整の結果を見た日にまとめて記録する癖をつけておこう。
家計簿の残高が証券会社の評価額と一致しない理由
iDeCoを始めてしばらく経つと、家計簿の残高と、運営管理機関のマイページに表示される評価額がずれていることに気づきます。これは記帳ミスではなく、複式簿記の基本的な考え方によるものです。
複式簿記は原則として「取得原価主義」で記録します。取得原価とは、実際に払い込んだ金額のことです。iDeCoは投資信託や定期預金などで運用されており、運用成績によって評価額が日々変動しますが、その値上がり分(含み益)や値下がり分(含み損)は、まだ売却して確定した利益ではありません。そのため家計簿では、これまでに拠出した掛金の累計額をそのままiDeCoの資産残高として記録し続けるのが原則です。
たとえば毎月23,000円を1年間拠出すると、家計簿上のiDeCo残高は276,000円になります。同じ時期に運営管理機関のサイトを見ると、運用成績次第で評価額は290,000円かもしれませんし、260,000円かもしれません。どちらの数字も間違いではなく、見ている対象が違うだけです。家計簿は「いくら払い込んだか」を、証券会社の評価額は「今売ったらいくらになるか」を表しています。
含み益・含み損をあえて記帳しない理由
もし評価額の変動を毎月家計簿に反映しようとすると、運用商品の基準価額を毎回確認して差額を計算する手間がかかり、しかも受け取り時(原則60歳以降)まで実現しない利益や損失を家計の収支に混ぜ込むことになります。含み益を収益として計上すれば、まだ手元にない利益で純資産が増えたように見えてしまい、相場が下がった月には逆に含み損で家計が悪化したように見えてしまいます。日々の家計管理としては、拠出額の累計を淡々と記録し、実際に受け取る時期が来てから受取額を確定させる方が、記録の手間も少なく、家計の実態も見誤りません。
家計簿のiDeCo残高と証券会社の評価額がずれてても、記帳ミスじゃないよ。家計簿は「払い込んだ累計額」、証券会社は「今の評価額」を見せてるだけなんだ。含み益や含み損はまだ確定してないから、無理に追いかけずに払込額だけ淡々と記録すればいいよ。
資産科目として記録するメリット
- 家計の赤字に見えなくなります。「支出」ではなく「資産の積み立て」として扱うため、iDeCoに拠出を続けても損益計算書が実態以上に悪化しません。
- NISAと分けて資産の流動性を把握できます。今すぐ使えるお金と60歳まで動かせないお金を別の資産科目で管理でき、家計全体の自由度が一目でわかります。
- 節税メリットも家計の成績に反映されます。所得控除による還付金を収益として記録すれば、掛金の負担だけでなく税制メリットまで含めた家計の実像が見えてきます。
BokiBookでiDeCoを管理する
BokiBookでは、勘定科目の管理画面から「iDeCo(確定拠出年金)」のような資産科目を自由に登録できます。毎月の掛金引き落としは普通預金からiDeCoへの振替として、年末調整の還付金は収益科目として、それぞれ数タップで仕訳を記録できます。
NISA用の「有価証券」とiDeCo用の資産科目を分けておけば、貸借対照表・損益計算書レポートで「今すぐ使える資産」と「老後のための資産」を分けて確認できます。また、「スーパーで2500円使った」のように話しかけるだけで仕訳案を提案してくれるAIチャット仕訳機能を使えば、「iDeCoの掛金が2万3千円引き落とされた」と伝えるだけで仕訳案を作成できます。さらに毎月同じ金額が引き落とされるiDeCoの掛金は、固定費の自動仕訳ルールに登録しておけば、ワンタップで毎月の記帳が完了します。
iDeCoは掛金振替の仕訳を1本、年末調整の還付金の仕訳を1本、毎年この2種類を淡々と積み重ねればいいよ。評価額の変動は追いかけなくて大丈夫。60歳で受け取るときが来たら、その時に受け取り方の仕訳を考えればいいんだ。